ベアリング形状についてJISで定められている内容から考察する

背景

3D CADでベアリングを自動でモデリングするプログラムを書こうと思い立ちました。
どうせならちゃんとしたものを作ろうと、各種寸法の決まり方を調べていたら、大半はJISで規格化されていました。
ただ、規格化されていない部分もあったので、思考整理のためにも一度まとめたほうがいいなと思ったというわけです。

前提

深溝玉軸受けの形状についてのパラメータは

  • 内径
  • 外径
  • 面取り(R)
  • 玉径
  • 玉数
  • 肩径(内径、外径)
  • 溝径(内径、外径)
  • 溝曲率
  • 内部隙間

が思いつく、これら寸法を関連するJISを交えながら寸法の決まり方を検討する。

呼び番号

呼び番号は下記JISで規格がある。
JIS B 1513

深溝玉軸受けの場合は以下

内径

ベーシックな寸法は記載がある。
JIS B 1512-1 表1~8

表以上の数値を選びたいときはJISで定める標準数R40から選択できる。
JIS B1512-1 A.2 「主要寸法の拡張方法 軸受内径(d)」

ちなみにR40とは40√10の等比数列らしい
JIS Z 8601 「標準数 付表」

外径

内径と同様に基本はJIS B 1512-1の表に記載がある。
寸法の拡張方法には内径と直径系列を決めれば外径は決まるとかいている。

JIS B 1512-1 A.3「主要寸法の拡張方法 軸受外径(D)」

しかし、拡張方法で記されてる係数を使用しても標準寸法品とはいまいち一致しない。
内径Φ100までの内外径をプロットしてみたらほぼ直線だったので、標準品の比例で近似して係数算出するほうが良い気がする。

内径と同様に基本はJIS B 1512-1の表に記載がある。
寸法の拡張方法には内外径と直径系列を決めれば幅は決まるとかいている。 JIS B 1512-1 A.4「主要寸法の拡張方法 軸受幅(B)」

幅系列は直径系列から自動的に決まる。
寸法系列の十の位である(0か1のみ)。
60系列以下のものは1系列、62系列以上のものは0系列となっている。

JIS B 1513 付表1「転がり軸受の呼び番号 補助記号 軸受系列記号」

しかし、拡張方法で記されてる係数を使用しても標準寸法品とはいまいち一致しない。
内径Φ100までの内外径と幅をプロットしてみたのが下記である。
全然合ってない。

ただ、数値は標準数R80から選択しなかければならない。

面取り(R)

内径と同様に基本はJIS B 1512-1の表に記載がある。
数学的には、幅、外径、内径から決まる。

幅Bもしくは(外径D - 内径d)/2の小さいほうの7%未満で、
(0.05, 0.08, 0.1, 0.15, 0.2, 0.6, 1, 1.1, 1.5, 2, 2.1, 2.5, 3, 4, 5, 6, 7.5, 9.5, 12, 15, 19) から最も近い値を選択する。

JIS B 1512-1 A.5「主要寸法の拡張方法 面取り寸法」

JIS B 1514-3 「面取り寸法の最大値 付表1」

玉径

内径等と関連づく明確な指示はなかった。
ただ、玉径を選択する際の推奨する寸法はあった。
JIS B 1501 表1 「転がり軸受-鋼球 推奨する寸法」

NSKの3Dを見てみる

NSKの3Dモデルを見てみると、4.25mmなどの推奨寸法外のものが使われているので、あまり守られていないのかもしれない。

NSKの3DをN=20ほどのサンプルを拾って確認したところ、
玉径 = (外径D - 内径d) / 4
にすべてなっていた。

玉数

玉数はJISでの記載はなかった。
調べたところ、メーカ等で違うらしく、明確な数値はない模様。
ただ、構造上入れられる限界の数は決まっている。
一説によると入れられる限界数-1くらいが一般的という話もある。

肩径(内径、外径)

JISに記載は無い。
ただ、関連する寸法として、軸やハウジングの肩寸法の指示がある。
JIS B 1566 5.2「転がり軸受-取り付け関係寸法及びはめあい 軸及びハウジングの肩の高さ及び直径」

これによると軸orハウジングの肩径は、
軸肩径最小 = 内径d + 2 * 肩高さh
ハウジング肩径最大 = 外径D + 2 * 肩高さh

肩高さhはベアリング面取りから決まる。
JIS B 1566 表1 「転がり軸受-取り付け関係寸法及びはめあい 軸及びハウジングの隅の丸みの半径並びにラジアル軸受に対する軸及びハウジングの肩の高さ」

ベアリングの肩高さは基本的に軸やハウジングの肩よりも大きい必要があるので、この値より大きい値ということが推測できる。

NSKの3Dを見てみる

NSKの3Dを見てみると一貫性がなく、確定的な値は判別できなかった。
外径側と内径側で溝深さが違っているうえ、関係性もわからなかった。
一番関係性が近そうな線を引いてみたのが、以下である。

※肩すきま = (外輪の肩径 - 内輪の肩径) / 2

機能的なことを考えると、サイズによるスラスト許容荷重を踏まえて溝深さを設計する必要があるので、内輪と外輪で荷重の加わり方は同じにならないと思うので、溝深さが違うのは納得できる。

溝径(内径、外径)

JISには記載がなかった。
ただ玉径と玉位置が決まればおのずと決まる値である。

NSKの3Dを見てみる

NSKの3Dデータを見ると、玉位置は内径と外径の中心位置に配置されている。
玉径は(外径D - 内径d) / 4 なので、つまり

内輪溝径 = (外径D - 内径d) * (1/4) + 内径d
外輪溝径 = (外径D - 内径d) * (3/4) + 内径d

となる。

内部隙間(ラジアル)

内部隙間記号はC2, CN, C3, C4, C5の種類がある。 内部隙間は内径と内部隙間記号によって決まる値である。
JIS B 1520-1 表1 「転がり軸受-内部すきま- 第1部:ラジアル軸受のラジアル内部すきま 深溝玉軸受(円筒穴)のラジアル内部すきまの値」

CNの場合は呼び番号で省略することができるので、一番標準的なすきまはCNと言えるだろう。

溝曲率(溝半径)

JISには記載は無かった。

考え方としては、
許容したいスラスト荷重を決め、肩乗り上げが発生しない接触角を決め、そのようになる曲率を設計する。という流れかと想像する。