AmazonのBTS7960を使ったモータドライバ回路の詳細

安価で大きな電流を流せるBTS7960モータドライバ

1000円~1500円程度で販売されている、43A流せると謳っているモータドライバがあります。
販売しているところはいくつかありますが、回路の固有名称が無く、使っているICの名前からBTS7960モータドライバとかで調べれば出てきます。
(ヒートシンクを除けば)割と小型で、かなり安価なので、タミヤのギアードモータを動かすくらいなら余裕でいけそうです。
問題は、回路の説明がほとんどなく、データシートや簡単な説明書すらありません。
ICが3つしか乗っていないので自分で調べろということなのでしょうか

そこでまずは回路図を書いてみました。

回路図


この回路は、3つのICから構成されていて、BTS7960 x2と74HC244、それと抵抗とコンデンサが少し乗っているだけです。
74HC244は3ステートバッファで、入力の簡易絶縁を担っています。抵抗も4/8つは30kΩのプルダウン抵抗でした。
この回路をモータドライバたらしめるのはBTS7960です。

動かし方

VCC、GND
R_IS、R_EN、RPWM
L_IS、L_EN、LPWM の8ピンがあります。

ENピンはICのINHに、PWMピンはINピンに74HC244を介して繋がっています。
正転は、(R_EN, L_EN, RPWM, LPWM)=(1,1,1,0)
逆転は、(R_EN, L_EN, RPWM, LPWM)=(1,1,0,1)
ニュートラルは、(R_EN, L_EN, RPWM, LPWM)=(0,0,X,X)
ブレーキは、(R_EN, L_EN, RPWM, LPWM)=(1,1,0,0)

BTS7960の説明

初めに、これはデータシート見ればわかることをつらつら書いているだけなので悪しからず。

このBTS7960はなかなかハイスペックで、TO263のサイズ(10x15mm)の中にハーフブリッジ(Pch+Nch)とゲートドライバ、電流センスが内蔵されています。
データシートはこちら→BTS7960
PchとNchでハーフブリッジを作っているので、Duty比100%にすることができ、オン抵抗もPchが7mΩ、Nchが9mΩでまずまずといったところです。
なぜPchのほうがオン抵抗が低いのでしょうか?一般的にはNchのほうが性能が良くなるはずなのに....。
このICには7つピンがあり、

  • 制御入力(IN, INH)
  • 電源入力(VS, GND)
  • 出力(OUT)
  • スルーレート設定用(SR)
  • 電流センス出力(IS)

です。

電圧とかのスペック

  • 電源電圧は5.5V~27.5V(絶対最大定格は45V)
  • ロジック入力の電圧は、LOWが~1.4V、HIGHが2.15~5.3V
  • 出力連続電流40A以下、パルス電流60A以下
  • オン抵抗、ハイサイド7mΩ、ローサイド9mΩ

電源電圧が5.5Vからとなっていますが、オン抵抗が完全に下がりきるのはVsが12V以上の時なので、効率よく運用するなら12V以上ですかね。
ロジックの入力電圧も低いので、3.3Vマイコンから直接駆動できますね。
43Aという表記はハイサイドの過電流保護がかかる電流のようですね。ローサイドは最悪33Aで保護回路が働くようなので、30A以下での運用が望ましいのではないのでしょうか。

制御

IN(Input)とINH(Inhibit)があり、
INHがLOWだと、スリープモード(ハイインピーダンス)
INがロジックLOWで出力がLOW、ロジックHIGHで出力がHIGH
電流センスが機能するのは、(IN,INH)=(HIGH,HIGH)の時だけなので、出力がHIGHの時です。

スルーレート

スルーレートとはFETのスイッチング速度のことで、SRとGNDの間に抵抗を挟んで速度を決定します。早すぎると振動的になったり、ノイズに弱くなったりするのでしょうね。
この回路では10kΩが入っていました。
グラフがあるわけではないので正確なことは言えませんが、10kΩだとHighLow両サイドのスルーレートが5V/μsくらいでしょうかね。
デッドタイムスルーレートに合わせて調整してくれる模様。

電流センス

こちらもISピンとGNDの間に抵抗を入れることで、ハイサイドの電流に比例した電流が、ISピンに流れます。
ISに流れる電流をIISハイサイドに流れる電流をILとすると、IIS=IL/8500です。
この回路では10kΩがISピンとGNDの間に挟まっているので、
VIS[V] = IIS[A] * 10k[Ω] = IL * 10k/8500 = IL/0.85
となります。
IL=4.25AでVIS=5Vなので、抵抗が大きすぎる気がします。

注意

  1. 電流センス機能はハイサイドにしかついていないということで、ローサイドがONの時は機能しません。フルブリッジを構成する場合は電流センスピンを切り替えて読む必要がある。
  2. この回路に乗っている抵抗はあまり精度が良くなさそうなので、そのまま使うときは気を付けなければならない。
  3. この電流センスは倍率kILIS=8500と書きましたが、最悪が3000~14000の範囲なので、無闇に信頼するのは危険。使えるのかこれ?

価格

実はこのICは既に販売中止になっています。そのため現存品からしか買うしかありません。
この記事を書いた段階ではDigikeyでも売ってませんでした。
AliExpressでは5ピース$12くらい。
回路自体はAmazonで1100円くらいで、AliExpressでは$6くらいでした。

後継機?

このICはinfineonという会社のNovalithICシリーズなのですが、BTS7960以外にもBTN8982やBTN8962があります。
深くは見ていませんが、互換品であるように見えます。

EagleLibrary

BTS7960のライブラリを作っている人が見当たらなかったので作りました。
良ければ使ってください github.com