ベアリングの検討するうえでの注意点と検討方法

深溝玉軸受けを選定するうえで、車載でのベアリング選定で気を付けていた項目と検討方法について説明する。
基本的にNSKのカタログベースで考える。
レベル感の共有として、私が検討しているのは内径30~40、外形50~80くらいのサイズのベアリングの検討での知見である。

静的な状態での強度

基本静定格荷重で定められている。
静等価荷重(加わるラジアル&スラスト荷重、ベアリング固有値から決まる値)よりも大きくしておく。
通常時だけではなく、瞬間的に加わる荷重(振動、衝撃)も考慮すること

基本静定格荷重と静等価荷重
https://www.nsk.com/jp/common/data/ctrgPdf/bearings/1102q.pdf#page=19

許容回転数

高速回転での故障モードは熱による焼き付き、つまり熱による故障である。
そのため、荷重の条件、潤滑条件、グリース種類、シールド種類、保持器種類で変わるため明確な値というものを出すのは難しい。
とはいえ指標はある。
基本はサイズによって許容回転数が決まっている。
軸受寸法表 深溝玉軸受
https://www.nsk.com/jp/common/data/ctrgPdf/bearings/1102q.pdf#page=78

これに荷重の大きさ、ラジアル荷重とアキシアル荷重の比率、による補正係数加える。
軸受の許容回転数
https://www.nsk.com/jp/common/data/ctrgPdf/bearings/1102q.pdf#page=21

グリースによる補正係数は以下
潤滑剤
https://www.nsk.com/jp/common/data/ctrgPdf/bearings/1102q.pdf#page=58

基本的に有利不利は以下である。

  • 油潤滑 > グリース
  • 樹脂保持器 > 鉄保持器
  • 接触シールド(ZZやVV) > 接触シールド(DUなど)
  • 荷重 小 > 荷重 大
  • アキシアル荷重 小 > アキシアル荷重 大
  • ベアリングサイズ 小 > ベアリングサイズ 大

寿命(使用率)

荷重と回転回数とベアリングサイズでおおむね寿命は決まる。
寿命は荷重に比例しないので注意すること。
軸受の寿命
https://www.nsk.com/jp/common/data/ctrgPdf/bearings/1102q.pdf#page=15

これに温度、信頼度(故障確率)、特殊熱処理、振動の有無などで補正がかかる。
温度による基本動定格荷重の補正
基本定格寿命の補正
https://www.nsk.com/jp/common/data/ctrgPdf/bearings/1102q.pdf#page=16

荷重係数
https://www.nsk.com/jp/common/data/ctrgPdf/bearings/1102q.pdf#page=17

ベアリングでは、特殊熱処理を加えることで寿命の向上を図ることできる。
例えばこれ
UR軸受
https://www.nsk.com/jp/common/data/ctrgPdf/bearings/1103c.pdf#page=372
私の知識では、UR処理によって軸受特性係数 a2に対して、4の値をとることができる。
つまり通常仕様に対して寿命を4倍で計算することができる。(リンク先では2倍って言ってるけど....)

その他熱処理もあるらしいが、詳しくは知らない。
軸受長寿命化技術におけるHi-TF軸受・Super-TF軸受の位置付け
https://www.nsk.com/jp/common/data/ctrgPdf/bearings/1103c.pdf#page=135

アキシアル荷重が大きい際の乗り上げ

深溝玉軸受けの場合、アキシアル荷重が大きいと玉と転動輪(内外輪)との接触面積が小さくなる場合がある。
この状態を肩乗り上げという。接触面積が小さくなることで応力が増加し、焼き付き等につながる。
そのため許容アキシャル荷重に気を付ける必要がある。

深溝玉軸受の許容アキシアル荷重
https://www.nsk.com/jp/common/data/ctrgPdf/bearings/1103c.pdf#page=37

私の経験の範囲では肩乗り上げによる面積減少率を15%以下に抑えるようにしていた。

はめあいとすきま

ベアリングを固定するうえで、一般的に内輪か外輪かどちらかをはめあいで固定する。
その時の締め代を決める必要がある。
締め代が小さいと、はめあい部で滑り、発熱、効率悪化、摩耗粉の発生などの影響が出る。
締め代が大きいと、内部隙間がつまり寿命の減少が起きる。
そのため適切な締め代を決める必要がある。

荷重や温度差、線膨張係数差、面粗度によって締め代は変わる。
各種条件下に置いても数um程度の締め代を維持し、滑らない設計にしておく。

軸受のはめあいとすきま
https://www.nsk.com/jp/common/data/ctrgPdf/bearings/1102q.pdf#page=44


締め代が発生する条件では、転動輪が膨張か収縮し、内部すきまが減少する。
また、内輪外輪の温度差によってもすきまは減少する。
選定しているすきまがはめあいによって0以下にならないように気を付ける。

はめあい によるラジアルすきま の減小量と残留すきま
内輪・外輪の温度差によるラジアルすきま の減少量と有効すきま
https://www.nsk.com/jp/common/data/ctrgPdf/bearings/1102q.pdf#page=50

具体的な膨張収縮量については以下
はめあい面の面圧,最大応力及び膨張・収縮量 https://www.nsk.com/jp/common/data/ctrgPdf/bearings/1102q.pdf#page=68

内輪軌道径、外輪軌道径の寸法の計算式は一般に

  • 外輪軌道径Da=(4×D+d)/5
  • 内輪軌道径db=(D+4×d)/5
    D:外輪外形、d:内輪内径

参考元:https://www.ezo-brg.co.jp/product/document-detail08.html
NSKなりJISなりに計算方法があると思ったのになかなか見つからなかったので、北日本精機を参考


すきまは過剰でもマイナスでも寿命が減少する。
しかし、マイナスの状態での寿命減少率が激しいため、通常運転で発生する条件ではすきま0mm以上を設定する。
すきまと寿命の関係は以下

ラジアル内部すきま & r と疲れ寿命L
https://www.nsk.com/jp/common/data/ctrgPdf/bearings/1102q.pdf#page=71

ギアによってベアリングに加わる荷重を検討する

歯車の荷重計算
https://www.nsk.com/jp/common/data/ctrgPdf/split/728/nsk_cat_728h_226-239.pdf
平歯車、はすば歯車、やまば歯車、ウォームギアの場合の計算式が記載されている。
ギアの場合、単純な反力だけでなく、ねじれによる荷重も加わるので注意のこと。
ベアリング配置によっても加わり方が変わる。