有線電動ドリルドライバ(Primero社のDDR-70AZA)の分解

電動ドライバって値段比にしてかなりのものが入っていると思いませんか?
安いものは3000円なのにその中に、モータ・減速機・AC100Vでの制御回路・トルククラッチ・3爪チャックが入っています。
これを部分的に取り出して利用できたらかなり便利だと思いませんか。
そんな理由で電動ドライバの回路とハードがどんなふうになっているかを知りた買ったため分解してみました。

今回分解したのはこいつ
Primero(プリメロ) の DDR-70AZA

全体図

軽く説明すると、AC100V入力で、速度調整できる引き金スイッチと正転逆転切り替えスイッチ
φ10mmまでチャックでき、トルククラッチを6段階で調整できます。

ケースはねじで止められているだけなので簡単に外せます。

この時点でわかることはスイッチ部は専用のモジュールになっており、外に小さい回路基板が入っています。

先に分解した結果を簡単に構造を説明しますと、こんな感じ

回路

基板

基板はこんな感じ

乗っている部品は右図のKBPC610という6Aブリッジダイオード
左図の黄色いのは300V耐圧の0.22μFのコンデンサ、あとは小さい抵抗とコンデンサが乗っているだけです。
ブリッジダイオード以外ほとんどなにも乗っていないと言えますね。

スイッチモジュール

スイッチモジュールの型番はfa2-8でした。
制御回路はほとんどすべてこちらに集約されていそうで、ぱっと見ではどのような構造かわかりません。
全体像の写真を撮り損ねたorz
機会があれば追加します。

軽くばらしてみました。

左図に乗っている黒いICはBTB06という600V6Aのトライアックでした。
こいつがパワー部品ですね。
取り出してよく見てみたら下図のような感じです。

左のスライダ部分が可変抵抗になっており、ここで速度を調整しているはずです。
トライアックの右端子がゲートになっており、そこからオレンジ色の部品が直列でつながっています。
テスターで簡単に確認したところ、双方向に導通しましたので、おそらくこれがDIAC(ダイアック)かと思われます。

ここから察するに、AC電源のアナログ式位相制御を使っているのだと思います。
ちゃんと辿ったわけではありませんが、おおむね下図のようなニュアンスの回路だと思います。

以下のサイトから画像をお借りしました。
トライアックの使い方について | 臨床工学技士の為の電子工作

正転逆転を切り替えるスイッチもモジュールの中に組み込まれているのですが、おそらくスイッチにモータ電流が流れており、物理的に切り替える形になっています。
分解と同時にはじけてしまったので画像はないのですが、ここの部分の再利用は難しいでしょう。

回路まとめ

まとめるとこんな風な回路

交流の段階で位相制御して電力を調整し、そのあとにブリッジダイオードで整流したものをモータに流すという流れ。
私には整流前に電力制御をするという発想がなかったため、面白い回路だなって思いました。

ハードウェア

モータ

モータはLESHI MOTOR社という中華メーカ製、LESHI MOTOR 5512SP-61901-A 100V 190505/Cと刻印されています。
外形は37mm、長さはシャフト含めて74mm LESHI MOTORのHPからデータシートを探そうとしたのですが、サイトにエラーが出ていて詳細が調べれませんでした。

減速機

減速機構は遊星歯車減速機でした。
内歯車が固定になっていて、太陽歯車の歯数=9、内歯車の歯数=45で減速比=6のものが2段になっているため、総合減速比36
モジュールは大体0.8くらい
最終出力段は3爪チャックやクラッチ部分とくっついており、ばらすことができませんでした。

ちょっと面白いところは、モータ側の遊星ギアは樹脂でできており、出力側の遊星ギアは金属製でした。
同じ形状なのに、樹脂部品を採用しているのはコスト低減のためでしょうか

ギア部分を順に組み立てるとこんな感じです。

これを見て気づいたのですが、ベアリングとか入っていないのですね。
価格から考えたら当たり前なのですが、グリスまみれにしているだけです。

それと意外だった部分が、金属対金属で滑る部分に何も入っていないことです。
樹脂のワッシャとかをかまして削れたりしないようにしないのでしょうか。
コストが理由かと思っていたのですが、樹脂対金属の部分には黄色い樹脂ワッシャ?的なものが入っているのでよくわかりません。
金属対金属よりも樹脂対金属のほうが摩耗するのでしょうか。それとも減速前だから摩耗度合いの差からくるものなのでしょうか。

トルククラッチ

ここの機構が面白かったので少し説明します。
過剰なトルクがかかった時に、保護のために滑るような機構です。

樹脂のカバーとかを頑張って溶断して外したものが下図。

左のばねが過剰なトルクがかかった時に伸縮して、逃げを作ります。
こんな感じ(下図参照)、
このばねの強さ(縮め量)を調整してクラッチ強さを調整できるようにしています。

今回の滑る部分は内歯車です。
内歯車の出力側のところに突起がついており、これが鉄球を通じてばねを押して、突起以上にばねが縮むことで、 クラッチが滑る機構です。

内歯車をただ固定しているだけでなく、クラッチの部品として活かしているところが面白いです。

まとめ

工作のために一部分だけ取り出して利用しようと考えたとき、

回路部分は大部分が専用モジュールなので、そのまま利用するのは不便そうです。
頑張れば利用できなくはないですが、それなら基本部品だけ取り出して、ユニバーサル基板で再実装したほうがよさげです。
一番の問題は、正転逆転切り替えをハード側で行っているため、その部分は自分で組まないといけません。
電流はMAX6Aで考えればよさげなので(他部品の定格が6A)、リレー2つとかで切り替え回路を組むのが良いかもしれません。

ハードウェア部分は、チャック部分まで欲しいなら、そのまま利用できますし、 切断工具を持っているならば、下図の部分を切断すれば、簡単に利用できそうです。
ただ、φ10mmの鉄を切断する必要があるので、固定のしづらさと合わせてなかなか骨が折れそうです。
それと本記事ではしれっと黒い樹脂のガワを外しているのですが、ここは破壊しないと取れない部分で、取るのに結構苦労したので手間がかかるかもしれません。

切断せずに減速機までを利用したい場合、ネックになるのが下図の部分

ここの部分が出力とくっついているため取り外せないのです。
幸いギアではなく、ピンの部分ですので自作することは十分に可能そうです。
ピン直径もφ3だったので、適当でいいならM3ねじと穴開けた板で代用ができそうです。

部分利用してもうちょっと試してみて、進展あれば記事に追記します。